Chrome Beta,Andy Rubin,Firefox OS

WebOSによるWebアプリが当たり前になったとき、大きなルールチェンジが起きるかもしれない話をしたい。



Chrome Beta

AndroidはアプリケーションをJavaで開発するGoogleのOSで、Chrome OSはWebの技術でアプリを開発するGoogleのOSである。異なる2つのOSをGoogleは持っており、それらを統合することは、ずっとGoogleの懸案であった。だから、Googleは少しずつだが取り組みを進めていた。



AndroidにはChromeブラウザーアプリがあるが、Chromeのβ版も存在している。最新のChrome Betaでは、WebRTCやWebGLといった最新の技術をモバイルの世界に導入した。次のGoogle I/Oで紹介されるであろう、新しいAndroidでは更に強力なWebブラウザを搭載することになるだろう。AndroidのブラウザをChromeに置き換え、強力なWeb機能を提供し、その中でChrome OSとの融合を図っていくことを想定していたと考えられる。



Google Play&Data Compression Proxy

一方でWebで強力な機能を提供しすぎると、Google Play(Googleのアプリケーションストア)の価値はなくなっていく。GoogleはWebの側での新たな囲い込みとして、Data Compression Proxyを配し、全てのWeb通信をGoogle経由にさせる準備を進めていた。GoogleにとってPlayを毀損するだけの代償もきちんと準備を進めていたと言える。綿密な戦略のもと、AndroidChrome OSとの統合を少しずつ進めていたのであろう。



▼Andy Rubin

このたび、アンディー・ルービンががAndroidの開発チーフから離れた。そして、次にはサンダー・ピチャイに変わるという。サンダー・ピチャイはChrome OSのトップであるため、2つのOSのトップを兼務していく事となる。AndroidChrome OSの統合はGoogleの懸案であった。この統合の路線をサンダー・ピチャイが担うということは、Android側でなく、Webの側を中心に統合を加速する人事だと考えられる。



そして、この人事に関して着目したい事がある。ルービンが5月にD11 Conferenceに出席する予定だったことだ。ごくごく最近まで5月以降もルービンは、Androidのトップの予定で、この人事がGoogle内部でも急激な変化だったと考えられる。つまり、AndroidとChromeOSを戦略のもとに統合を進めてきたGoogleにとって、何らかの時計の針を一気に進めざるを得ない事案が浮上した可能性がある。



Firefox OS

それに相応するのが、先日のMWC(Mobile World Congress)ではないだろうか。Firefox OSやTIZENの発表が相次ぎ、一般紙まで第三のOSと騒いだのは記憶に新しい。これらのOSは想像以上に強い力を持つ、ムーブメントとなった。



なかでもFirefox OSはクリステンセン言う破壊的テクノロジーに相応しい。今はローエンドとやかましく言わないようだが、そもそもMozillaは100$のスマートフォンを目指していた。Mozilla自体が次の20億人へインターネットを提供する事を目指しており、中心となる価格もそれに応じたものになるだろう。



また、Firefox OSは多くの人が親しんでいるWebの技術で非常に簡単にアプリが開発できる。Web開発者の数はiOS/Androidに比べ十倍以上存在する。



つまり、既存のアプリにはJavaObjective-Cといったプログラミング言語により、それなりの障壁があった。それが誰もが親しんでいるWebの技術で簡単にアプリができるようになる。しかも安い。Firefox OSが目指している、既存の市場を支配しているものをチープ、ありふれたもので置き換える戦略は破壊的テクノロジーで主張されているパターンと非常に良く合致しているように思う。



WMCではWebOS陣営が明確で強いモデルを描き始めているのが明確になってきた。一般紙に掲載されるほどの明快で単純なモデルだった。WebOSへの流れが強まりが、Googleの対応を早めることに繋がったのではないかと思う。



▼Webアプリの世界でプレイヤーの変更も

Webアプリではサイトそのものがアプリになる。HTML5の進歩により、サイトをオフライン化することも可能である。またFirefox OS等では、サイトをパッケージにしてアプリとして配布することも可能である。アプリとWebサイトの境界がなくなり、アプリストアの意義が変わる。



アプリ提供者がストアを使って課金をすると、現在は数十%の中間マージンが取られている。それがAppleGoogleに濡れ手に粟とも言える収益をもたらしていた。だから、ストアでの課金をためらい、ワシントンポストのようにWebサイトに変えていくところも存在していた。そういったストア回避の流れがアプリ全体に及ぶ可能性がでてくるだろう。



では、ストアを通さない決済を実質握っていくのは誰か?ここに主要プレイヤーが変わる可能性が出てきている。Googleは新しい流れに備えて手を打とうとしているが、AppleMicrosoftからはその動きは見えない。